2005年4月20日 毎日新聞

記事の内容
大手金融機関の不良債権処理は大きな山場を越えた。
政府の思惑通りなら「本格的な景気回復」となるはずだが、これまでのところ景気回復を 実感している人は数少ないのではないだろうか。
政府が主張していた「金融と産業の一体再生」はまだ道半ばの感がある。
整理回収機構で不良債権処理や企業再生に携わり、企業再生コンサルタントとして活躍する津田敏夫さん(44)に企業再生の実情について話を聞いた。
【田畑悦郎、写真も】

企業再生コンサルタント
津田 敏夫さん
早大政経卒。85年、富士(現みずほ)銀行入行。00年に整理回収機構入社。
大阪特別回収部兼企業再生部でゴルフ場再生などに携わり、03年に
企業再生コンサルティング「ジーケーパートナーズ」を設立、代表パートナーに就任した。


■企業再生の実情■

本業収益向上がカギ

―銀行の不良債権はかなり減ったはずですが、
  景気回復の実感がいま一つわきません。

◆銀行は不良債権を売却したり、再建をカットするなどして処理を進めてきた。債権カットで融資を受けていた企業の負担は軽くなるが、そのことと売上高の増加、利益の回復は別問題だ。私は、顧客企業の依頼で銀行に対して債権カットや第三者への債権売却を要請するなど財務リストラの手伝いをしているが、これが成功しただけで、企業が再生するわけではない。
生き残りのカギは本業の収益力だ。経営者が創意工夫をして本業を元気にしない限り、再生の道はない。

―不良債権が減ったことで銀行は融資に積極的になっているのでしょうか。

◆それは感じる。私のところにも、いい融資案件がないか、銀行からの問い合わせが増えている。大手銀行がいったん債権カットを行い、企業が身軽になったところで、新たな融資をする例も出始めている。従来では考えられなかったことだ。銀行側も収益力アップに向け、リスクを取って利ざやの大きい中小企業貸し出しに前向きになっている。特に、経営破たんで不良債権を一掃した後、外資系になった銀行の動きが目立っている。投資案件を探す外資系ファンドからの問い合わせも多くなってきた。当然、本業の収益力がある企業が対象となるが、金は徐々に回り始めており、景気の回復に向けた企業再生の動きはこれから活発になると思う。

―再生が可能な企業かどうかを見極めるポイントは、本業の収益力ですね。

◆そう。新たに受ける融資を返済できる力が当然必要になる。経営者のやる気など経営陣の資質も重要だ。さらにその企業しか出来ない「オンリーワン」の技術を持っているかどうかも大切だ。現在、関西のある「オンリーワン企業の再生に取り組んでいるが、その企業がなくなると取引先はたちまち困ってしまうことを実感している。その影響の大きさを考えると、こうした企業は存続が必要だと思う。規模の大小ということではなく、どうしたら従業員の雇用を守れるかを基本に企業再生の支援業務を行っている。

Close
印刷
HOME