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 整理回収機構(RCC)について

     
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目次

     
    1.住宅金融債権管理機構(住管機構)について
2.整理回収銀行(RCB)について
3.合併
4.整理回収機構(=RCC)の概要
5.整理回収機構(=RCC)における企業再生
     

 株式会社整理回収機構は、株式会社住宅金融債権管理機構(=住管機構と言います)と整理回収銀行(=略称RCB)が合併して平成11年に創設されたものです。
なお、以下の文章には、多分に筆者(津田敏夫)の意見・感想が含まれていることをご了承ください。

1. 住宅金融債権管理機構(住管機構)について

(1) 住専問題

 住宅金融債権管理機構(住管機構)は、住宅金融専門会社(住専と言います)が経営に行き詰った際、その不良債権処理を回収する機関として設立されました。その処理のために、住専国会と呼ばれた平成8年の国会で6,850億円の公的資金を投入することが決まったのですが、税金を不良債権の処理に使うのはけしからんとの理由で、国会で揉めました。住専問題処理に対する世間の眼の厳しさから、以後の政府の施策は及び腰になってしまい、結果的に傷を深めることになりました。

(2) 住宅金融債権管理機構(住管機構)設立

住専債権の回収のため、平成8年住宅金融債権管理機構(住管機構)が設立され、中坊弁護士(元日弁連会長)が社長に就任し、強力な回収を開始しました。私は平成8年、当時の富士銀行から住宅金融債権管理機構(住管機構)大阪特別整理部に出向を命じられ、この会社には設立当初から関わりました。

2.整理回収銀行(RCB)について

(1) 2信組破綻

  整理回収銀行(RCB)は、住宅金融債権管理機構(住管機構)の設立以前、平成7年に東京の2信組(東京協和信用組合、安全信用組合)が破綻した際に、その受け皿銀行として設立されました(当時の名前は東京共同銀行)。

(2) 大手行の破綻

  その後、北海道拓殖銀行を初めとする銀行が破綻する度に、整理回収銀行(RCB)(平成8年に東京共同銀行から改組)が不良債権の引受け金融機関となりました。

3.合併

(1) 相次ぐ銀行破綻

 拓銀、山一證券の破綻後、日本の金融システムは一気に不安定となって、効率的かつ強力な回収機関が必要とされました。そこで、平成11年に住宅金融債権管理機構(住管機構)が整理回収銀行(RCB)を吸収する形で両社が合併し、整理回収機構(RCC)が発足しました。

4.整理回収機構(=RCC)の概要

(1) 人員構成

 株式会社ではありますが、株主は預金保険機構だけです。役職員はピークには約2,400名いましたが、H18年7月現在、1,271名しかいません。また、このうちプロパー社員は約800名です。残りの約470名にはもちろん出向者が含まれていますが、その数はかなり減っており、大部分が嘱託社員で占められています。

(2) 債権構成

 管理している債権は、住専債権とRCB債権に分かれています。住専債権は、住宅金融債権管理機構(住管機構)からきたもので、買取価格が4兆6,558億円、そのうち既に3兆円以上を回収しており、回収率は66.1%です。RCB債権は整理回収銀行(RCB)に由来するもので、破綻金融機関から買い取った債権です。買取価額は、住専勘定なみの4兆7,156億円で、回収の累計は5兆円を越えるため、回収率は105.2%にもなります(以上はH18年3月期)。この他に、健全金融機関から買い取った不良債権がありますが(53条債権といいます)、全体のボリュームからすると、大きな割合ではありません。

(3) 今後大規模な資産譲受はない

 現在では預金等全額保護のもとでの破綻金融機関からの資産譲り受け業務は終了し、今後、従来のシステムによる破綻行からの大規模な資産譲り受けはありません。

(4) RCCとの取引

 私が整理回収機構(=RCC)在籍当時、自分の債権がどうして「RCC送り」(下記注)なのか、取引先から抗議を受けることが何度かありましたが、この抗議を整理回収機構(=RCC)にしても無駄です。なぜなら、破綻金融機関の処理スキームにおいて、整理回収機構(=RCC)はどの債権を譲り受けるのかの認定には関与していないからです。譲り受け銀行が引き受けなかった債権を、整理回収機構(=RCC)が買い取る仕組みになっており、整理回収機構(=RCC)は、債権を選ぶことはできません。
(注)「RCC送り」と言うのはマスコミが言い出した言葉ですが、イメージが良くないことから、RCC内部では使っていません。

5.整理回収機構(=RCC)における企業再生

(1) 再生の条件

整理回収機構(=RCC)においても、企業再生の対象となるのは一般に考えられる基準と変わりません。ホームページに記載されている判定条件としては、下記のものが挙げられています。

@誠実な債務者であり、再生に強い意欲を有しているか
A経済合理性があるか
B当該事業に事業価値があるか
C主要債権者やその他の債権者の同調が見込まれるか
D経営責任・株主責任の明確化が可能か
E地域経済への影響はどうか

この他、幅広い観点からの検討が必要、とされています。
企業再生には債務免除がつきもので、結局は誰かが損を被ることになります。その際、「救済してあげよう」という気が起こらなければ、誰も助けてくれません。そのためには、誠実なこと、事業が儲かっていて雇用に貢献していること、また、その先を助けることが、長い眼で見れば債権者のためにもなるということが必要です。以上の条件は、整理回収機構(=RCC)に限らず、企業再生の対象となるためには、当然のことと言えるでしょう。

(2) 整理回収機構(=RCC)では、再生に法的整理も有り得る

整理回収機構(=RCC)のいう企業再生には、事業再生も含んでいます。したがって、会社更生法のように、オーナーの経営権はなくなっても、誰かの手で事業は続けられるといった法的整理もあります。整理回収機構(=RCC)における企業再生は、オーナーを救うためだけのものではありません。

以上